アップル-サムソン知財紛争早わかり(2)

アップルの日本特許権(東京地裁及び知財高裁)

  バウンスバック特許(スティーブ・ジョブス特許)
2011(H23)年 5月20日 バウンスバック特許4743919登録
 8月23日 アップルが特許4743919号侵害で訴訟提起
2013(H25)年 6月21日 東京地裁29部中間判決(平成23(ワ)27781(損害賠償請求事件) 大須賀滋裁判長)被告製品(被告製品3については,ソフトウェア変更前の旧製品に限る)は、特許第4743919号の特許発明の技術的範囲に属し、かつ、特許(請求項19等)は有効。

解説(特許第4743919号):特許発明は、ドキュメントやリストを指でスクロールして、ドキュメント最後に達するとスクロールが急に止まるのではなく、あたかも何かにぶつかって「跳ね返った(bounce back)」かのように動作するプログラムを備えた装置です。

解説(サムスンの事業戦略):サムスンは様々な種類のシリーズを随時新規に発売しており、新製品発売後の改良も頻繁に行っています。問題となっているバウンスバック技術は、「リストの最後になったことを視覚的に格好よく明示する技術」です。従って、バウンスバックではなく、一般的方法でリスト最後を明示するようにソフトを改変すれば、バウンスバック特許の権利範囲外とすることが可能です。サムスン製品3では販売を継続するため、2011年10月頃にソフトウェアが変更され、リストの最後になるとバウンスバックせずに青く光るようになりました。その結果、サムスンはバウンスバック特許を侵害しない製品3を売り続けました。それ以降、サムスンは世界中で事業展開し、かなりの売り上げを上げていますので、本件裁判の判決が出て損害賠償を命じられても、サムスン社の業績には大きな影響はないと思われます。

解説(無効理由):上記日本の判決では、無効理由は無いと判断されました。しかし、2013年9月27日に、ドイツ高等裁判所(ミュンヘン)ではバウンスバック特許EP2059868の内容は2007年1月9日のiPhoneプレゼンテーションhttp://www.youtube.com/watch?v=Etyt4osHgX0&feature(39分位にバウンスバック効果(黒い端の部分)が見えるようです)で公開されていると認定して無効を宣言しました。両国での判断の相違は、ドイツでは、2007(H19)年1月7日(優先日)に提出された出願書類に特許発明がclear and unambiguouslyに記載されていない、と判断され、日本では書類全体からみて優先権主張された発明が記載されている、と判断されたことによるのかもしれません。

 その他のアップルの特許(ファイルシンクロ技術)
2011(H23)年 8月31日 アップルがサムスンを特許4204977号侵害で訴訟提起
2012(H24)年 8月31日 東京地裁40部判決(平成23(ワ)27941(損害賠償請求)東海林保裁判長)請求棄却(係争製品は技術的範囲外)
2013(H25)年 6月25日 知財高裁2部判決(平成24(ネ)10084(控訴審)塩月秀平裁判長)控訴却下

解説:明らかに非侵害であり、特に注目する内容はありません。